msi Vector16HXAI:WindowsとUbuntu24.04のデュアルブートの環境構築

デュアルブート環境構築で同じエラーに悩まされている方へ

はじめに

みなさんこんばんは. 松尾研究室配属学生B4の千代航平です.今回は研究用のPCのセットアップにハマってしまう部分があったため,その解決方法を共有したいと思います.

目次

今回セットアップする環境

今回セットアップする環境は以下の通りです.

  • PC: msi Vector16HXAI
  • OS: Windows 11, Ubuntu 24.04
  • windows, ubuntuともに 1TBのSSDを別々に用意

今回のPCの選定は以下のような理由から行いました.

  • 個人で使用しているのがm1macbookであるため, ubuntu,windowsの両方を使用できると便利
  • 同様にm1macbookはarmアーキテクチャであるため、x86アーキテクチャのPCがあると便利
  • GPU環境でVLA(pi0など)を動かすためにVRAMが比較的大きいものが必要
  • RTX5080が予算的にギリギリいけたのでこれを選定
  • RTX5080以上あるとIssac simが動くので、将来的にロボットシミュレーションを行う際にも便利

1. SSDの取り付け

購入時点では1TのSSDが1枚のみ取り付けられておりWindowsがインストールされていました. これの一部をUbuntu用に割り当てても良かったのですがslot が空いていたので、もう1枚SSDを購入して取り付けました. SSDは以下のものを購入しました.

取り付け自体は難しくないのですがこのPCの裏を開けるのが少し大変でした. 基本的にこちらの分解動画を参考にすると良いと思います. https://laptopmedia.com/jp/guides/how-to-open-msi-vector-16-hx-a13v-disassembly-and-upgrade-options/

2. Windows/BiosからSSDを確認

SSDを取り付けたらまずはWindowsからSSDが認識されているか確認します. 確認ができたらUbuntuをインストールするために一度formatしておきます. また、BIOSからもSSDが認識されているか確認しておきます.msiのPCのBIOSは起動時に del キーを押すことで入れます.

3. Ubuntuのインストール

Ubuntuのインストール自体はインストールメディアを作成してusbを刺して起動するだけなので特に難しいことはありません. usbから起動しないときはbiosの設定で起動時にusbから起動するように設定しておく必要があります.

インストールメディアの作成ツールは何でもいいと思いますが今回は balena Etcher を使用しました.(https://etcher.balena.io/)

ここで今回のポイントとなるのですが、インストール時にUbuntuをインストールするSSDを選択する際に一切ssdが認識されませんでした. 最初は新しいssdがうまく認識されていないのかもしれないとも思いましたが、Windowsからは認識されているかつもともとからあるSSDも認識されていませんでした. ここからUbuntuのinstallへの長い戦いが始まりました…

3.1 Intel RST

この問題の原因はIntel RSTという機能にありました. Intel RSTはIntel Rapid Storage Technologyの略で、SSDをRAIDとして認識させることでパフォーマンスを向上させる機能です. Windowsを使用する際には問題ないのですが、RSTを使用しているとLinux kernelからはSSDが認識されなくなることがわかりました.

本当なのかどうかはわかりませんが,こちらのredditの投稿など見てみると,Linux kernel はIntel RSTをサポートしていないようです. そのため、RSTを無効にする必要があります.

3.2 Intel RSTの無効化

RSTを無効化するにはBIOSから行います.参考 : https://www.intel.com/content/www/us/en/support/articles/000037220/technologies/intel-rapid-storage-technology-intel-rst.html

通常であればVMD settingなどがBIOSの設定にあると思いますが、msiのPCではVMD settingはありませんでした. というより明らかにBIOSの設定項目が少ないことに気づきました. そこで,MSIのBIOSについて調べていくと以下の隠しコマンドが存在し, BIOSの設定項目を増やすことができることがわかりました.

  • BIOSの設定画面で" (右Ctrl or copilotボタン) + 右 shift + 左 alt + F2 “を押す

参考 : redditの投稿

これを行った後, advanced → SA configuration → VMD setup menu → Enable VMD Controllerを Disableに変更します. これでRSTが無効化されます.

3.2.1 Windowsの設定

RSTを無効化した後は、Windowsの環境を壊さずにSSDを認識させるために、Windowsの設定を変更する必要があります. 以下の2つのlinkが参考になります

しかしながらこちらの手順を行ってもWindowsがブルースクリーンになってしまう可能性はあるのであくまで自己責任で行ってください. また、私はこちらの手順をとばして先にUbuntuのインストールを行い、後からWindowsの復旧を行ったためこちらに関しての検証はできませんでした.

3.3 Ubuntuのインストール

RSTを無効化した後は、再度Ubuntuのインストールを行います. インストールメディアを作成してusbから起動し、インストールを行います. インストールの際にSSDが認識されるようになります.

SSDが認識されるようになったので通常通りubuntuのinstallを行います. まちがえてwindowsのSSDを選択しないように注意してください. インストールが完了したら正常にubuntuが起動することを確認します.

4. Windowsの復旧

RSTを無効化した後にWindowsの環境が壊れてしまう可能性があるため、Windowsの復旧を行います.

自分の場合はubuntuのinstall後,以下のような状態になりました.

  1. Windowsの起動時にブルースクリーンが発生
  2. 放置すると自動的にWindowsの復旧が始まるが自動復旧は失敗
  3. windowsの復旧メニューからコマンドプロンプトは起動できる

まず必要なことはwindowsにRSTを切った後のssdを認識させることです. windowsのセーフモードで起動することでこちらを行うことができるようです. コマンドプロンプトから以下のコマンドを実行します.

bcdedit /set {current} safeboot minimal

その後、PCを再起動するとセーフモードで起動します. 起動が成功してログインすることが出来たら以下のコマンドでセーフモードでの起動を解除します.

bcdedit /deletevalue {current} safeboot

これでWindowsの起動ができるようになります.

4.1 pinの再設定が必要になったがネットワークがないため再設定が出来ない.

上記の手順でWindowsの起動ができるようになったのですが、pinの再設定が必要といわれ(biosまわりの設定をいじったため)ましたが,safemode minimalではネットワークが使えないため再設定ができませんでした.

ここでまず試すべきなのが shift を押しながら再起動を行い、Windowsの復旧メニューからコマンドプロンプトを起動することです. これが可能であればsafemodeを解除できるようになるため、pinの再設定も行えるようになります.

しかしながら、私の場合はこの方法ではpinの再設定ができませんでした.shift を押しながら再起動しても、Windowsの復旧メニューに入ることができずブルースクリーンが発生してしまいました.

4.2 インストールメディアからの復旧

windowsのコマンドプロンプトが操作できないと何もできないので、インストールメディアからの復旧を行います. インストールメディアを作成してusbから起動し,復旧メニューに入ることでコマンドプロンプトを起動することができます.

windowsのisoファイルは以下からダウンロードできます. https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows11

ここでダウンロードしたファイルをもとにインストールメディアを作成します. balena Etcherはwindowsのisoファイルを書き込むことができなかったので今回は WinDiskWriterというツールを使用しました.

インストールメディアを作成したらusbから起動し、復旧メニューに入ります.

ここでコマンドプロンプトを起動し、以下のコマンドを実行します.

bcdedit /deletevalue {current} safeboot

これでセーフモードでの起動が解除されるため、pinの再設定ができるようになります. その後、PCを再起動するとpinの再設定が求められるので再設定を行います. 再設定が完了したら通常通りWindowsが起動することを確認します.

ちなみにここでもbcdeditがうまく使えない問題が起こる可能性があります.(自分がそうでした) その場合はなんどか試すとともに以下のリンクなどを参考にしてみてください.

https://www.partitionwizard.jp/partitionmanager/the-boot-configuration-data-store-could-not-be-opened.html

5. おわりに

以上で,msi Vector16HXAIのWindowsとUbuntu24.04のデュアルブート環境構築の手順は完了しました. 文面にしてしまうと簡単なのですが、実際にはこのセットアップに2日ほどかかってしまいました…

もし同じような環境を構築しようとしている方がいれば、この記事が少しでも参考になれば幸いです.

6 おまけ (GPUドライバのインストール)

Ubuntuのインストールが完了したら、GPUドライバのインストールを行います.せっかくRTX5080を積んでいるのにGPUドライバが入っていないと何もできません.

sudo apt install nvidia-driver-570-open

これを実行することでGPUドライバをインストールできます. インストール後に一つ注意点があり,インストール時にMOK(Machine Owner Key)の登録を求められます. これはセキュアブートを有効にしている場合に必要な手続きとなります. セキュアブートを有効にしている場合は、MOKの登録を行う必要があり,これをしないとsecure bootが有効な状態ではドライバが読み込まれません.

reboot 後に選択画面が必ず出てくるので、ここで continueではなくEnroll MOKを選択し、Enterを押します. その後、パスワードを入力し、再度Enterを押します. これでMOKの登録が完了します. これでGPUドライバのインストールが完了し、RTX5080を使用できるようになります.

参考link集